2023年度共通テスト本試験の第1問は、ル・コルビュジエをめぐる二つの文章を並べた出題だった。複数テキスト問題で最初に見るべきは、出題者がなぜその二つを並べたのか、である。本文の組み合わせから見ていく。
本文――二つの文章の組み合わせ

問題に例の写真は載せられていたものの、受験生がそこに着目してイメージを膨らませられていたか、という点については、正直疑問が残るところ。
- 【文章Ⅰ】正岡子規を導入として、視覚装置としての窓について述べた文章。子規が結核で寝たきりであった、ということは知っているのが大前提。
- 【文章Ⅱ】住宅が内面的に瞑想(沈思黙考)するための場であるため、風景や光を壁で遮る必要がある、という文章。
とにかく窓から外を見ることを書いている【文章Ⅰ】に対し、【文章Ⅱ】では「見る」ためには意図的な外界の遮断が必要、としているあたりが逆説的で面白い組み合わせだったと言える。


本文にない「動く視点」

実は、ル・コルビュジエは住居として考える際に、その中で生活する人々の「動く視点」を考えて建築する、ということを重要視した建築家なんだけれど、その点については、今回の問題からだけでは到達できない。だから、【文章Ⅱ】を完結した文章として読み解こうと努力した受験生は、いたずらに混乱し、肩すかしを喰らうことになったと思われる。
ただ「壁で視界を遮断する」という部分だけが問題では採り上げられていた。そういう意味で、共通テストならではの「情報収集能力」が問われている問題だったと言えるね。
設問ごとに
問1――漢字は語彙力へ

問2――言い換えを見極める

- ①「現状を忘れるため」/②「自己の救済につながる」/④「外の世界への想像をかき立ててくれた」/⑤「作風に転機をもたらした」がそれぞれキズ。
選択問題のキズのパターンとして、「勝手に因果関係」というのがあるから、「ので、から、ために」が選択肢の文中にあった場合は、ちゃんと因果関係が成立しているかどうか、確認しよう。
問3――理由は直前と引用文に

- ①「季節の移ろい」に限定しているのが×。③「切り離したり接続したり」/④「新たな風景の解釈を可能にする」/⑤「絵画に見立てる」がそれぞれキズ。
問4――「特徴」と「効果」の両方を問う変則問題

「換気ではなく『視界と採光』を優先した」という箇所に着目しよう。さらに、引用文中の「まず壁を建てることによって視界を遮り、つぎに連なる壁面を要所要所取り払い、そこに水平線の広がりを求める」という箇所が「効果」として大切になってくる。この「水平線の広がり」という箇所が、正答肢⑤の「かえって広がりが認識されるようになる」と合致するんだ。
間違えやすいのが④の選択肢なんだけど、この設問文の「効果」というところに着目していれば、「風景への没入」がキズになっているのが分かると思う。
ただ、正答肢⑤の「換気よりも視覚」という表現がちょっとおかしいんだよね。「換気」と「視覚」では語彙のレベルが合っていない。「換気」という動作を表す名詞と合わせるなら「採光」にしないと変でしょう。そういったノイズで正答率を下げてしまうというのは、ちょっと問題としてよろしくないと思うなぁ。
あと、この問題は聞き方としては最終的に「『ル・コルビュジエの窓』の特徴と効果」を問うているので、実は、【文章Ⅰ】限定の問題じゃないんだよね。むしろ【文章Ⅱ】の主題に合致している。その辺も、短い時間で解いている受験生にとっては、ごちゃまぜになって分かりにくくなる要因なんじゃないかな、と思うよ。
問5――選択肢のお尻から二択に絞る

- ②「住宅はおのずと人間が風景と向き合う空間になる」がおかしい。④「一箇所において」が限定しすぎ。①は採光について述べているだけで、風景についての記述がない。最後の「心を癒す」も書きすぎ。
⑤はやらしいね。傍線部が「壁の持つ意味」を述べているのに、⑤の選択肢は「窓」に限定して話を進めているというのが一番のキズ。でも、【文章Ⅰ】では「窓」について中心に述べているもんだから、そこの区別は受験生にはつきにくいんじゃないかと思う。「自己省察」も言い過ぎっぽいけど、これだけで×にはしづらいだろうなぁ。
問6――穴抜き型は、設問文を復元する



- ⅰ「【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】におけるル・コルビュジエの引用文の違いを説明せよ」
- ⅱ「【文章Ⅰ】の筆者はなぜ正岡子規の例を取り上げたのか」
- ⅲ「子規の話と【文章Ⅱ】との関係は?」
ⅰが一番迷うと思う。まず、設問文をよく読んで、「引用文」の比較である、という理解をしっかりして、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の「引用文」がどこにあるのか探して印をつけるところから始めなきゃいけない。【文章】同士の比較ではないから、そこは注意が必要。
【文章Ⅰ】では「開口部」としての「窓」について述べられているが、【文章Ⅱ】ではただの壁について述べられている、というのが核心になると思われる。でも、いやらしいことに、【文章Ⅰ】の引用部分にも、実は「窓」という語句は登場していないんだよね。
そういった読みをした上で、選択肢の吟味に移ると、①と②はキズが深いから消せるものの、③と④にはほとんど違いがないんだよね。結局③の「壁の外に広がる圧倒的な景色」というところくらいしかキズはないんじゃないかな。これは何かしら凄い景色があるわけじゃなくて、「四方八方景色に囲まれていたら圧倒的に感じる」、という内容だったから、一応違うと言えるよね。
ⅱはまだ分かりやすい方かな。傍線部Bの「ガラス障子は『視覚装置』だといえる」を境に、正岡子規の話をル・コルビュジエの話とつなげていっているからね。
ⅲの設問文は置き換えにくいね。「【文章Ⅱ】と関連づけたときの【文章Ⅰ】の主題は?」とでもすべきなのかもしれないけれど、直前に「子規の話題は」とあるから、あまり【文章Ⅰ】全体を意識することはせずに、「子規の話と【文章Ⅱ】との関係は?」くらいで読んだ方が分かりやすそう。
正答肢③の、「子規の書斎も沈思黙考の場として機能していた」というのが、結局、出題者がこの二つの文章を並べて出題した意図だったんだろうね。
並べた出題者の意図を掴む

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