現代文の読解力の身に付け方――速読と精読は別の力

前回、現代文の学習を知識・読解力・解法の三本柱に分けた。今回はその二本目、読解力の話をする。ひと言で「読解力」と言っても、実はその中身は二種類あって、伸ばし方もまるで違う。まず、そこを分けるところから始めたい。

読解力は一つではない

生徒
読解力を身につけるためにはどうしたらいいの? そもそも読解力って何?
先生
ひと言で「読解力」と言っても、実はその能力は二種類あるんだ。
  • 速読して文章の大意を読み取る力
  • 精読して難解な文章を理解する力

この二つが、まるで別のものであることは、きっとすぐに分かると思う。

生徒
本をたくさん読んでいる人は、両方できているように見えるけど。
先生
普段から読書が好きで、国語も大好き!という人は、割と両方を持っていることが多いよ。だから混同されがちなんだけど、そもそも国語があまり得意じゃないという人が力をつけていこうとするのなら、きちんと分けて把握しておいた方が効果的に勉強できる。

速読――時間との勝負で大意を取る

先生
まず、「速読して文章の大意を読み取る力」。これは特に最近の共通テストなんかでは重要視されてきている能力。時間との勝負である入試の中で、速く正確に読み取る力はとても重要だよね。

共通テストの選択問題も、細かくキズを探す消去法ではなく、大意を読み取れているかどうかを問うものが増えてきているから、気をつけないといけない。

精読――速読では取れない箇所を、作問者は狙う

先生
次に、「難解な文章を理解する力」。速く読もうとする時は、ある程度細部については流し読みをしてしまうけれど、文章の難度によっては、それだけでは読み取れない箇所があったりもする。
生徒
そういう箇所は、飛ばして先に進んじゃだめ?
先生
そういう箇所こそ、作問者は問題を作りやすいんだ。むしろ作問者にとっては、簡単すぎる文章から問題を作る方がよほど難しかったりするからね。

難解といっても、語彙が難しかったり、背景知識が必要だったり、センテンスとセンテンスの間に補わなければ読めない飛躍があったり、パターンは色々あるよ。

速読の伸ばし方――筋トレ的な訓練

先生
では、それぞれの「力」を伸ばす方法について説明していこうか。まずは、速読して大意を読み取る力から。
  • 線を引きながら読む
  • 時間を計って読む
  • 背景知識を活用する
  • トゲに敏感になる

こっちは本当に、筋トレ的な訓練になるね。だから当然、たくさん数をこなした方が良い。とはいえ、漫然とたくさんやっているような時間はないだろうから、コツを四つ挙げておいたよ。

線を引きながら読む

生徒
線って、どこに引けばいいのか分からないんだけど。
先生
授業をしていても、なかなかできていない人が多いんだよね。まずは自分流で好きに引けばいいんだよ。ペンを動かしながら読む、という行為自体が大事だからね。

やっている間に自分なりのルールが出来上がってくる。その際、たいてい線の量が減っていくことになるから、最初は引きすぎなくらい引いておいたらいいよ。

時間を計って読む

先生
これもなかなか実践してくれないんだけどね。旧センター試験の文章で、大体4000字程度。これを10分以内に読まないと、選択肢を選ぶ時間が足りなくなる。
生徒
高三になってから間に合わせるのじゃ、遅い?
先生
高三になって「時間が……」と相談に来る人が多くて困ってしまう。習慣づけをするのは早いほどいいよ。常にタイムトライアルだと思って訓練しよう。

背景知識を活用する

先生
速読効率を上げる意味では、これが一番の方法かな。入試に出てくるような評論は、大体テーマも限られているんだよね。

もちろん、最新の文章を出そうともしてくるから、一箇所か二箇所は目新しい論の展開を加えている文章が問題文には選ばれるものなんだけれど、その箇所以外は割とどこかで見聞きしたような論だったりするものなんだよ。

生徒
ということは、知っている話のところは読み飛ばしていい?
先生
違う。テーマ毎の背景知識をきちんと知っていれば、後は「この筆者のオリジナルはどこだろう?」という目線で読むだけでよくなる、ということ。圧倒的に読むのが速くなるよ。

トゲに敏感になる

先生
最後のコツは、少し観念的に「トゲ」なんて表現をしたけれど、上手く言い表すのが難しいんだよね。「速読する」といっても、それが誤読になってしまうと意味が無い。結局、問題を解くときに間違ってしまうからね。
生徒
速く読みながら誤読もしない、なんてできるの?
先生
文章の中でも節目になるような単語・表現に敏感になっておくのが一番なんだ。
  • 背景知識のインデックスになるような「キーワード」
  • 文章全体を打ち消すような否定語――見落とすと完全に逆の意味になってしまう
  • 「できる」等の可能表現――センテンスにプラスの意味を付加している

これらを細かく挙げていっても混乱するだけだと思うから、まずは「センテンスや単語の価値は全て均一というわけではない」と頭に入れた上で、「大事なところを見落とさないように気をつけよう」と意識するようにしよう。

生徒
じゃあ、否定語や可能表現を探しながら読めばいいんだね。
先生
探しに行くもの、と思ってしまうと、たぶんどこかで困る。トゲは、読んでいて「何かおかしい」「ここが引っかかる」と感じるもののことだよ。上に挙げたのは、その引っかかりが出やすい場所であって、チェックリストじゃない。

引っかかったら、そこで一度止まって、主語・文法・論理・語義のどこがおかしいのかを確かめる。違和感は答えではなくて、確かめ始めの合図なんだ。

生徒
でも、引っかかるかどうかって、感覚の問題じゃない?
先生
そう、感覚。だから、トゲを感じられるようになるかどうかは、その人の訓練次第――読書経験次第なんだ。普段から本を読んでいる人は、意識しなくても引っかかる。

そうでない人は、上に挙げたような場所で意識して止まる練習をして、引っかかりを自分の中に作っていく。そのうち、意識しなくても刺さるようになる。ここも筋トレだね。

見落とさないでいた箇所がトゲのように刺さってくれるようになると、それを足がかりに読み進められるし、誤読も減るはずだよ。

精読の伸ばし方――「難解」とは何か

先生
次に、精読して難解な文章を理解する力の身に付け方。そもそも、文章が難解であるってどういうことか分かるかな?

文章を書く時、筆者は当然、読者のことを意識しているよね。文章を書くというのは、コミュニケーションなんだから、相手のことを考えるというのは当たり前のこと。逆に言うと、筆者は自分の想定している読者に内容が伝わりさえすれば良いんだよ。だから、書かなくても読み取ってもらえると思った内容については、どんどんカットもしてしまう。

つまり、文章を難解に感じるということは、筆者の想定する読者としてのリテラシーに、解答者が追いついていない、ということになるね。

補足:大学入試の問題は、基本的には「新書」よりも難度の高い本から出題されることが多い。そういう意味では、大学生レベル以上を読者と想定していると考えた方がよい。ただ、逆に、あまりに専門的な文章は出ない。加減が難しいところではある。

生徒
難しいのは文章のせいというより、こっちが想定読者に追いついていない、ということ?
先生
そういうことだね。では、そういった難解な文章を読むためにはどうすれば良いかというと、次の三点が大事。
  • ヨコ(二項対立)
  • タテ(具体と抽象)
  • ピント(大意とセンテンス)

これらについては長くなるから、一つずつ別の記事にきちんとまとめる。

別の力なら、別の鍛え方

生徒
速読と精読で、全然違う力が必要なんだね。でも、どっちもしっかり頭を使わないといけないから大変だ。きちんと理解した上で、トレーニングを重ねていかないといけないなぁ。

前回の言い方で言えば、「どこは速く進み、どこで立ち止まるのか。立ち止まったとき、何を手がかりに読み直すのか」。速く進む力と、立ち止まって読み直す力は、分けて鍛える。次回からは、立ち止まったときの手がかり――ヨコ・タテ・ピント――を一つずつ扱う。

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