前回、現代文が勉強しづらい理由について、「いろいろなものが一つの『国語力』としてまとめられているからだ」と書いた。では、実際に何を分ければよいのか。
三つの柱


- 知識――知っているか
- 読解力――読めるか
- 解法――答えられるか
もちろん、実際に文章を読むときには、三つがきれいに分離して働くわけではない。知識があれば読みやすくなるし、設問が本文を読む手がかりになることもある。


① 知識――知らないものは、そもそも見えにくい

だから、語彙は単に「漢字問題で点を取るため」に覚えるものではない。文章を読み、ものを考えるための道具なんだ。


背景知識

- 実際には、近代、言語、身体、科学、芸術、資本主義、メディアなど、何度も形を変えて現れるテーマがある。
こうした知識があるだけで、文章はかなり読みやすくなる。
ただし、知識は本文を読まなくてよくするためのものではない。知っている話に当てはめて、「はいはい、この話ね」で済ませた瞬間に、その筆者がわざわざ書いた意味を見失う。背景知識は、今回の文章がどこまで同じで、どこから違うのかを見るために使うんだ。
この「知識」の中身については、別の記事でもう少し詳しく扱う。
② 読解力――問題を解く前に、文章そのものを読めるか

一読して大意を取れる文章もあれば、一文の意味を取るだけでかなり頭を使う文章もある。語句は全部分かるのに、センテンスとセンテンスの間がつながらないこともある。小説なら、人物がなぜそこでそう動いたのかが分からないこともある。
あなたが、筆者・作者が想定したレベルに達していなければ、その文章を読んだときに難しく感じることだろう。そういう「文章そのものの難しさ」を処理するのが読解力だ。


どこは速く進み、どこで立ち止まるのか。立ち止まったとき、何を手がかりに読み直すのか。このあたりが、読解力の学習になる。
③ 解法――読めたものを、得点に変えられるか

入試問題は、出題者と解答者とのコミュニケーションなんだ。出題者は本文を読み、どこを問うかを決め、設問を作り、採点できる答えを用意する。解答者は、その問いを受け取って答える。だから、筆者や作家が書いた文章を読めたことと、問題に正しく答えられることは同じではない。
問題は、筆者や作家とは別のところで、出題者によって作問されている。この出題者の意図に沿った解答を書けば点数になるし、意に沿わなければ点をもらえない。


それは傍線の引き方や、設問の問い方などに現れているのだけれど、国語が苦手な人ほど、そういった「出題者の文法」を軽視して読み飛ばす傾向がある。
まずは、出題者が何を答えさせたがっているのかをとらえ、出題者が期待している形で応える。そのコミュニケーション能力が解法だ。何も裏技のような特殊なものではない。ごくごくシンプルな、出題者とのコミュニケーションのお約束を学ぶだけで、現代文の点数は大きく上がることになる。
三つを分けると、間違え方が見えてくる

もちろん、完璧にすることは不可能なのだけれど、この三本柱を意識すると、問題を解いた後に、すべきことが見えてくる。
- 知らない語句や概念が多くて、そもそも文章の話題についていけなかったのなら、知識の問題が大きい。
- 言葉の意味は分かるのに、対比や因果を取り違えたり、人物の心情変化を追えなかったりしたのなら、読解の問題が大きい。
- 本文の内容はかなり理解できているのに、選択肢になると迷う。記述になると必要なことを書き落とす。そういう場合は、解法の問題を疑った方がよい。
もちろん、実際には複数の原因が重なる。背景知識がないために読解が遅れ、そのせいで設問処理の時間が足りなくなることもある。設問を見たことで、自分が本文を誤読していたと気づくこともある。
だから三本柱は、三つの独立した箱ではない。分けて考えるための地図なんだ。
一題から、何を持ち帰るか

- 何が足りなかったのか。
- この一題から、何を持ち帰るのか。
- 次に同じ種類の失敗をしないために、何を鍛えるのか。
そこまで分かって、初めて問題演習が学習になる。問題集を何冊終えたか、過去問を何年分解いたかだけでは、現代文の勉強量は測れない。一題を解くたびに、知識・読解力・解法のどこを伸ばしたのかを考える。
前回書いた「教材を教えるのではなく、教材で教える」というのは、学ぶ側から見れば、こういうことでもある。同じ文章が次の入試にそのまま出ることはない。だから、その文章について詳しくなって終わるのではなく、次の文章にも持っていけるものを一つずつ増やしていく。そのための最初の地図が、知識・読解力・解法の三本柱だ。

関連記事
――まず、「何を勉強しているのか」を分けて考える 「国語の勉強の仕方が分からない」「勉強しても成績が伸びない」。 昔から、本当によく聞く話である。 もちろん、現代文は一朝一夕に点数が上がる科目ではない。だったら短期的には英単語を覚えた[…]
前回、現代文の学習を知識・読解力・解法の三本柱に分けた。今回はその二本目、読解力の話をする。ひと言で「読解力」と言っても、実はその中身は二種類あって、伸ばし方もまるで違う。まず、そこを分けるところから始めたい。 読解力は一つではない […]
入試に出る 読解のための現代文キーワード700(旺文社・大学JUKEN新書)
過去10年の大学入試を分析し、読解に欠かせない700語を20章に整理。頻出度を星の数で示し、章ごとに確認テストを置いています。


