どこを問うか――出題者は一冊まるごと読む

この柱では、出題者が一つの問題を作り上げるまでを、作る順に追っている。前回は本文を選ぶところまで。今回は、その文章のどこに傍線を引くか。

一冊買ったら、全部読む

生徒
出したい本が決まったら、あとは4000字を切り取るだけ?
先生
出したいテーマの本が決まったら、その本から4000字くらいの文章を切り出してくることになる。順番は前後していて、「ここなら切り出せそうだ」という箇所がある本を買うことになるのだが、一冊買ったら、それは全部読む。その中で、面白いところ、受験生の――私も同じだが――考え方が少し開けるところ、「こんな見方があるんだな」と気づけるようなところを中心に切り取る。

同じことしか言っていない文章は使えない

ただ、よくあるのが、ワンメッセージの文章。4000字ずっと同じことだけを言っているような文章だと、問題が作れないので使えない。言いたいことが一つあったとして、そこに至るまでの論の展開の中に、問えるところが複数、3つから4つくらいないと、問題にすることができない。

生徒
問えるところが足りなかったら、どうするの?
先生
同じことを聞く設問を、いくつも作ることになってしまう。それは出題者としてかっこ悪い。受験生の能力を測ろうとしているのだから、そこが読めていないがゆえに設問を2つ落としてしまう、というのでは、問題として不出来ということになる。だから、きちんと問える問題を作らなければならない。

問いやすい場所

生徒
じゃあ、どういう所に傍線が引かれるの?
先生
言葉としては、「矛盾」や「逆説」があると、すごく問いやすい。整理するのも難しいし、難しいということは、問題にしやすいということになる。比喩表現も、それをほぐさせるということがやりやすい。具体例が多い文章なら、その具体例そのものよりも、その直前か直後に、具体を抽象化したような部分がやってくるはずだから、そこと例との関係で問題が作れる。

そして、3000字から4000字のそのテキストを選ぶ理由になった本文の主題については、必ずどこかで回収しようと考える。できれば、それをメインの記述問題にできれば、一番格好がいい。

小説は、誰の心情の変化か

小説については、また後の回で詳しく述べることになるが、心情の変化と葛藤などを見ることになる。登場人物は複数いることが多いけれども、誰の心情の変化なのか、誰の葛藤なのか、これを追いかけていくだけで、問題数はある程度揃う。ただ、あまり変化していない、変化がない、という場合は、文章として選びにくいという話にはなる。比喩表現も、聞けるには聞ける。

問えない場所

生徒
逆に、傍線が引けない所もあるの?
先生
ある。筆者の文体にもよるが、平易な文章で書いてくれている筆者は、答えが本文中にあるので、問題としては聞きにくい。抜き出しだけで終わってしまうし、選択問題にしても探すのがすぐになってしまうから、面白くない。

逆に、作る側の解釈をかなり足さないと答えられないようなところも、問題にしづらい。模試作成や入試問題の作成というのは、個人でやっていることはほぼなく、大抵チームでやることになる。その際に読みが割れる、他の先生と読み方が違う、という箇所が出てくると、そこはもう問題にできない、という話になる。

妥当な解釈を問う

生徒
先生たちの間で読みが割れる所は、問題にならないんだ。
先生
そう。一定以上の読解力を持った人間が読んだならば、その解釈に至るのが妥当である――その妥当な解釈ができるかどうかを生徒に問うことができるのが、いい問題ということになる。傍線を引いたあと、それをどんな形で問うかは、次の話。

まとめ

  • 出したい本が決まったら、一冊全部読む。考え方が開けるところ、「こんな見方があるんだな」と気づけるところを中心に切り取る。
  • ワンメッセージの文章は使えない。論の展開の中に、問えるところが3つか4つ要る。同じことを聞く設問は作らない。
  • 矛盾・逆説、比喩、具体例とその抽象化――こういう所は問いやすい。本文の主題は必ずどこかで回収する。
  • 小説は、誰の心情の変化か、誰の葛藤か。
  • 平易すぎて答えがそのまま本文にある所と、出題者の解釈を足さないと答えられない所は問えない。読みが割れる箇所も問題にできない。
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