現代文学習の三本柱――知識・読解力・解法を分けて考える

前回、現代文が勉強しづらい理由について、「いろいろなものが一つの『国語力』としてまとめられているからだ」と書いた。では、実際に何を分ければよいのか。

三つの柱

生徒
現代文に詰め込みすぎてフワフワしているのは分かったけど、じゃあどうやって勉強していったらいいの?
先生
今回も「三」という数字がキーワードになるね。現代文の学習は、大きく三つの柱に分けて考えるといい。
  • 知識――知っているか
  • 読解力――読めるか
  • 解法――答えられるか

もちろん、実際に文章を読むときには、三つがきれいに分離して働くわけではない。知識があれば読みやすくなるし、設問が本文を読む手がかりになることもある。

生徒
じゃあ、わざわざ分けなくてもいいんじゃない?
先生
それでも、学習するときには分けておいた方がいい。同じ「問題を間違えた」という結果でも、どこで間違えたのかによって、次にやるべき勉強がまるで違うからだ。

① 知識――知らないものは、そもそも見えにくい

先生
まず、知識。一番分かりやすいのは、漢字や語彙だね。人間は言葉を使って考える。「アイデンティティ」という言葉をまったく知らなければ、その概念を使って自分や他者について考えることはできない。

だから、語彙は単に「漢字問題で点を取るため」に覚えるものではない。文章を読み、ものを考えるための道具なんだ。

生徒
聞いたことがある言葉なら、知っていることにならない?
先生
「聞いたことがある」「意味を一問一答で言える」だけで、十分に知っているとは限らない。その言葉を文章の中で的確に捉え、自分でも使えるところまで来て、初めて読解のための知識になる。

背景知識

先生
もう一つ重要なのが、背景知識。受験生から見れば、現代文には毎回まったく違うテーマが出てくるように見えるかもしれない。だが、大学入試で出題できる文章には限界がある。専門家にしか分からない知識を前提にした文章では、国語の試験として成立しにくいからね。
  • 実際には、近代、言語、身体、科学、芸術、資本主義、メディアなど、何度も形を変えて現れるテーマがある。

こうした知識があるだけで、文章はかなり読みやすくなる。

ただし、知識は本文を読まなくてよくするためのものではない。知っている話に当てはめて、「はいはい、この話ね」で済ませた瞬間に、その筆者がわざわざ書いた意味を見失う。背景知識は、今回の文章がどこまで同じで、どこから違うのかを見るために使うんだ。

この「知識」の中身については、別の記事でもう少し詳しく扱う。

② 読解力――問題を解く前に、文章そのものを読めるか

先生
二つ目が、読解力。これは文字どおり、文章を読み解く力だ。当たり前のことだけれど、評論の筆者も小説の作者も、大学入試の問題を作ってもらうために文章を書いているわけではない。自分の文章を読んでくれるであろう対象を想定して、その人たちに最適化した難度で文章を紡いでいる。

一読して大意を取れる文章もあれば、一文の意味を取るだけでかなり頭を使う文章もある。語句は全部分かるのに、センテンスとセンテンスの間がつながらないこともある。小説なら、人物がなぜそこでそう動いたのかが分からないこともある。

あなたが、筆者・作者が想定したレベルに達していなければ、その文章を読んだときに難しく感じることだろう。そういう「文章そのものの難しさ」を処理するのが読解力だ。

生徒
速く読む力と、正確に読む力は、別ってこと?
先生
そう、読解力も一枚岩ではない。文章全体の大意を速く取る力と、難しい箇所で立ち止まって正確に読む力は、かなり違う。入試では時間が限られている以上、全部を同じ濃さで読むわけにはいかない。一方で、速く読むことばかり意識して、大事な箇所を誤読してしまっては意味がない。

どこは速く進み、どこで立ち止まるのか。立ち止まったとき、何を手がかりに読み直すのか。このあたりが、読解力の学習になる。

③ 解法――読めたものを、得点に変えられるか

先生
三つ目が、解法。ここで、文章を書いた筆者・作者とは別に、もう一人の人間が登場する。出題者だ。

入試問題は、出題者と解答者とのコミュニケーションなんだ。出題者は本文を読み、どこを問うかを決め、設問を作り、採点できる答えを用意する。解答者は、その問いを受け取って答える。だから、筆者や作家が書いた文章を読めたことと、問題に正しく答えられることは同じではない。

問題は、筆者や作家とは別のところで、出題者によって作問されている。この出題者の意図に沿った解答を書けば点数になるし、意に沿わなければ点をもらえない。

生徒
国語って、なんとなくそれらしい答えを書けば点をもらえる科目だと思っていた。
先生
そう捉えている人もいるかもしれないけれど、そんなことは決してない。理数系科目や暗記科目と比べて、答えが自動的に一義に定まる科目ではないが故に、出題者はその問題の答えが一義に定まるようにするために、多大な労力を払っているんだ。

それは傍線の引き方や、設問の問い方などに現れているのだけれど、国語が苦手な人ほど、そういった「出題者の文法」を軽視して読み飛ばす傾向がある。

まずは、出題者が何を答えさせたがっているのかをとらえ、出題者が期待している形で応える。そのコミュニケーション能力が解法だ。何も裏技のような特殊なものではない。ごくごくシンプルな、出題者とのコミュニケーションのお約束を学ぶだけで、現代文の点数は大きく上がることになる。

三つを分けると、間違え方が見えてくる

先生
どんなテーマの文章が出てもそのテーマについて知っていて、どんなに難しい文章が出てもきちんと読み解くことができて、どんな設問で問われても適切に応じることができる。もし三本柱を完璧にできたならば、現代文の点数は思いのままに取れるようになる。

もちろん、完璧にすることは不可能なのだけれど、この三本柱を意識すると、問題を解いた後に、すべきことが見えてくる。

  • 知らない語句や概念が多くて、そもそも文章の話題についていけなかったのなら、知識の問題が大きい。
  • 言葉の意味は分かるのに、対比や因果を取り違えたり、人物の心情変化を追えなかったりしたのなら、読解の問題が大きい。
  • 本文の内容はかなり理解できているのに、選択肢になると迷う。記述になると必要なことを書き落とす。そういう場合は、解法の問題を疑った方がよい。

もちろん、実際には複数の原因が重なる。背景知識がないために読解が遅れ、そのせいで設問処理の時間が足りなくなることもある。設問を見たことで、自分が本文を誤読していたと気づくこともある。

だから三本柱は、三つの独立した箱ではない。分けて考えるための地図なんだ。

一題から、何を持ち帰るか

先生
大切なのは、「今回も国語ができなかった」で終わらせないことだ。
  • 何が足りなかったのか。
  • この一題から、何を持ち帰るのか。
  • 次に同じ種類の失敗をしないために、何を鍛えるのか。

そこまで分かって、初めて問題演習が学習になる。問題集を何冊終えたか、過去問を何年分解いたかだけでは、現代文の勉強量は測れない。一題を解くたびに、知識・読解力・解法のどこを伸ばしたのかを考える。

前回書いた「教材を教えるのではなく、教材で教える」というのは、学ぶ側から見れば、こういうことでもある。同じ文章が次の入試にそのまま出ることはない。だから、その文章について詳しくなって終わるのではなく、次の文章にも持っていけるものを一つずつ増やしていく。そのための最初の地図が、知識・読解力・解法の三本柱だ。

生徒
どの力も大切そうだけど、取り組む問題や教材によって伸ばしやすい「柱」はまるで違いそうだもんね。分けて把握しておいて、文章にあたるたびに毎回どこを伸ばすのか考える、というのが大事なんだね。

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