四方田犬彦「世代について」
2014年度 北海道大学 前期
問題提起Q問一
世代の括りを、なぜ拒むのか。 速度・効率の社会で、何を根拠に結びつくか。
二項対立問二問三問四
何を根拠に人は結びつくか
世代(年齢という属性)
親密さ(同じ問題の共有)
結びつきの根拠
年齢に応じて人間を区分する制度
同じ問題を共有していること
成り立ち方
粗雑な網の目で掬い上げ、縄で束ねる
自明ではなく、意識的に築き上げる
シニシズムという病への関わり
世代を越えた病であり、世代の問題としては語れない
その病に抗するために築く
異質な他者が一人入ったとき
わけもなく崩壊してしまう
―
限定速度に同調しない者は排除され最下層化する。 大半は冷笑へ逃げ、年齢問わず及ぶ。
筆者の主張問五
世代という括りは権力者の発想。 親密さ(自明でない)が結びつきの根拠。
問一
傍線部A わたしは世代〜与したくない
なぜそう考えているのか述べよ四〇字以内この段落の言葉を用いて
設問型
なぜか
本文参照箇所
ひどく粗雑な〜るためである……
人間を個人と〜当している。……
例外を排除し〜世代論なのだ
考え方
○○を一括りにする権力者の発想だから。
傍線A直後の「というのも」 ⇨理由はこの段落の中にある
粗雑な網の目で掬い上げ縄で束ねる
=資質・期待の違う人々を一括りにする
単純なステレ〜札として添える
例外を排除し、残余を単一な色調に染め上げる
人間を個人として扱わず束で論じる …権力者の発想
→粗雑な括り・例外排除と権力性を40字に収める
必要要素
・資質の違う人々を粗雑に束ね、例外を排除して単純な評言で括る行為であること
・それが人間を個人として扱わない権力者の発想であること
問一
傍線部A わたしは世代〜与したくない
なぜそう考えているのか述べよ四〇字以内この段落の言葉を用いて
模範解答
資質の違う人々を粗雑に束ね、例外を排除して単純な評言で括る権力者の発想だから。
問二
傍線部B 子供を不幸にするシステム
三〇字以内本文中の言葉を用いて
設問型
どういうことか
本文参照箇所
教育という制〜物語っている……
世代論の根底〜践されている……
江戸時代の寺〜ことができた
考え方
傍線Bは段落末の結論 ⇨指すのは段落全体の教育制度
教育という制度そのもの =子供を分断化〜ゆく抑圧装置
cf江戸時代の寺子屋
…年齢に無関係に参加できた(年齢区分は近代の作為)
→年齢で分断・管理する教育という抑圧装置
∴「学校制度」と一般化せず「年齢による区分」を核語として残す
必要要素
・年齢に応じて子供(人間)を区分・分断するものであること
・教育という制度が子供を範疇化して管理する抑圧装置であること
問二
傍線部B 子供を不幸にするシステム
三〇字以内本文中の言葉を用いて
模範解答
年齢で子供を分断・範疇化し管理する、教育という抑圧装置。
問三
傍線部C こうした変化を懐疑的に受け止めてきた
なぜか説明せよ六〇字以内
設問型
なぜか
本文参照箇所
情報化社会と〜を置いている……
あらゆる声は〜で戯れに耽る……
この基準に同〜居場所を失い……
新しいアウト〜ほかならない
考え方
同調しない者を○○する体制だから。
「こうした変化」 =この二十年ほ〜ぐるしい変化
傍線の直後に理由はない ⇨次の段落へ
速度と効率に最高の価値
…声は表層として扱われ、責任を欠いた匿名性
この基準に同〜、居場所を失う
∴新しいアウト〜いる社会体制
cf年長者にも年少者にも例外なく及ぶ(世代の話ではない)
必要要素
・情報化(とグローバル化)が速度と効率に最高の価値を置いていること
・責任を欠いた匿名の表層のうちに事が進むこと
・同調しない者を排除し、新たな最下層を生む社会体制と見ること
問三
傍線部C こうした変化を懐疑的に受け止めてきた
なぜか説明せよ六〇字以内
模範解答
速度と効率に最高の価値を置く情報化社会は、責任を欠いた匿名性の中で、同調しない者を排除し新たな下層を生む体制だから。
問四
傍線部D この疫病に感染
どのようなことか説明せよ二五字以内具体的に
設問型
どういうことか
本文参照箇所
大半の者たち〜纏う側を選ぶ……
同年齢の多く〜しているさま……
ニヒリズムを〜必要とされる
考え方
「この疫病」 =直前の稚拙なシニシズム
ニヒリズムではない
…精神の強度と弛まぬ思考を要するのはニヒリズムの側
感染の具体 …安全地帯に身を寄せ合って傍観者を気取る
シニシズムの楽な意匠を纏う側を選ぶ
傍線部を含む文 …シニシズムに〜見出して安堵
→速度社会から逃れ、冷笑を纏って傍観者を気取ること
∴「シニシズムになること」と抽象語のまま返さない
必要要素
・速度社会から逃れ、そこに隠遁所を見出すこと
・シニシズム(楽な冷笑)という安易な態度を身に纏うこと
・安全地帯で傍観者を気取ること
問四
傍線部D この疫病に感染
どのようなことか説明せよ二五字以内具体的に
模範解答
速度社会から逃れ、冷笑を纏い傍観者を気取ること。
問五
わたしがもし〜のなのである
どのようなことか説明せよ一二〇字以内本文全体の論旨をふまえて
設問型
説明せよ(全文通読)
本文参照箇所
人間を個人と〜権力者の発想……
この基準に同〜居場所を失い……
年長者にも、〜用されてゆく……
これは世代を〜病ではないか……
世代という狭〜ればならない
考え方
条件 …世代に代わる枠組みと本文全体の論旨を踏まえる
前半 …世代論 =粗雑な束ね・例外の排除・権力者の発想
第八段落末
…世代という狭い観念の背後の鎖国的発想を、まず解体
中間
…速度と効率が同調しない者を排除(新しいアウトカースト)
⇨稚拙なシニシズムの蔓延(年長者にも年少者にも及ぶ、世代を越えた疫病)
波線部
…語る根拠は、同じ問題を共有する者どうしの親密さだけ
∴自明ではなく、冷笑に抗して意識的に築くほかない
問五
わたしがもし〜のなのである
どのようなことか説明せよ一二〇字以内本文全体の論旨をふまえて
必要要素
・世代論を、個人を束ね例外を消す権力者の発想として拒むこと
・世代という狭い観念の背後の鎖国的発想を解体すべきだとしていること
・速度と効率が同調しない者を排除する社会だという現状認識
・シニシズム(冷笑)が年齢・世代を越えて広がっていること
・世代に代わる枠組みとして、同じ問題を共有する者どうしの親密さを根拠とすること
・その親密さは自明ではなく、冷笑に抗して意識的に築くほかないこと
模範解答
世代論は個人を粗雑に束ね例外を消す権力者の発想で、鎖国的な狭さごと解体すべきだ。速度と効率が同調しない者を排除し、冷笑が年齢を越え広がる今、筆者が語る根拠は、同じ問題を共有する者どうしの自明でなく意識的に築くほかない親密さだけだということ。
教員用
口頭補足(本文解説)
①第3段落の三つの態度(庇護者のように振舞う/ものの数に入れない/市場調査として細分する)と、世代論に帰着しない形で書くという宣言。 ②速度の奴隷か、特権的に準備された贅沢なスローフードの消費者かという二択。どちらも筆者が肯定しない袋小路であること。 ③1990年代のインド神秘主義へのキッチュ的接近は、乗り越えの試みと見なすこともできたが失敗し、社会全体に大きな瘢痕を残した、という両義的評価。 ④シニシズムがどのような暴力を誘発し集団的熱狂へ変貌したかを二十世紀の歴史が物語っている、という参照。
背景知識
シニシズムとニヒリズムの位相差(積極的な否定を維持する強度を要する型/それを欠いた安全な傍観)。 近代教育と近代的軍隊の関係という歴史的指摘は、本文が前提として置くだけで論証していない。補足に留め、本文の主張として扱わない。 問五の設問文が作問者の読み筋を明示している点は、設問文のリードを利用する技術の実演材料になる。 検討のうえで採らなかった上位構造(観念による括り批判一般への統合)と、その棄却理由(問五の設問設計と本文語の保持)。
転用可能な気づき
属性によって事前に与えられる括りと、問題意識の共有によって事後的・意識的に築かれる結びつきという対比の型。似て見える抽象語を機能差で切り分ける操作。
骨の選定記録
授業の骨:年齢という属性で自動的に与えられる括り(世代・年齢別の教育制度)から、同じ問題を共有することだけを根拠に意識的に築く結びつき(親密さ)への転換。その間に、速度と効率が同調しない者を排除し、安易な冷笑が年齢を越えて広がるという現状分析が入る。 配置の理由:速度と効率の社会・情報処理優先・稚拙なシニシズムは対立の一方の極ではなく、親密さを意識的に築かねばならない理由を与える媒介である。対立項へ昇格させず、問題提起Q第二枝・限定・比較軸第3行・主張の4経路で本文枚に配置した。 近代教育=抑圧装置と寺子屋との対比は、対立側a命題3として統合し、詳しい解きほぐしは問二の【考え方】で行う(merged)。
未解決事項
問五の作問者採用解釈の射程:他社の解答は親密さの提起を「若者たちがシニシズムに陥らない」ためと若年層へ限定しているが、本文(第5段落・第7段落)は年齢を問わない射程を明示しており、本板書案は限定を採らない。採点現場で若年層への限定が加点要件として扱われる可能性は残るため、先生の判断を仰ぐ。 問三の「情報処理」の採否:他社の解答は第6段落の情報処理を理由に含めるが、傍線C直後の理由は第5段落の速度効率・排除であり、第6段落は冷笑へ至る別の筋と判断して採らなかった。60字内で情報処理まで含める構成も成立し得るため、別案として残す。
問一 注意
「この段落の言葉を用いて」の限定を越え、第2段落の教育制度まで理由を広げる誤り。粗雑な一括りだけを書き、権力者の発想という評価語を落とす誤り。
模範解答(全候補)/問一
【Claude・採用】資質の違う人々を粗雑に束ね、例外を排除して単純な評言で括る権力者の発想だから。
問二 注意
寺子屋との対比を踏まえず「学校制度」と一般化し、年齢区分という核語を落とす誤り。
模範解答(全候補)/問二
【Claude・採用】年齢で子供を分断・範疇化し管理する、教育という抑圧装置。
問三 注意
傍線部に近い語(速度・効率)だけで「変化が速いから」と止め、次段落の排除・アウトカースト創生まで踏み込まない誤り。
教員用
模範解答(全候補)/問三
【Claude・採用】速度と効率に最高の価値を置く情報化社会は、責任を欠いた匿名性の中で、同調しない者を排除し新たな下層を生む体制だから。
ニヒリズムとシニシズムの機能差
ニヒリズムを〜ぬ思考が必要だが、シニシズムはそれを欠いた安全な傍観である。情報を手にしただけで安心し内容を探索せず、分析ではなく情報処理に血道をあげる態度が、冷笑が立ち上がる筋の媒介になっている。
問四 注意
「シニシズムになること」と抽象語のまま返し、退避の対象・態度・立場まで降ろさない誤り。ニヒリズムとの対比を踏まえず、評価語(楽な/冷笑)を落とす誤り。
模範解答(全候補)/問四
【Claude・採用】速度社会から逃れ、冷笑を纏い傍観者を気取ること。
問五 注意・先生への疑義
波線部だけを言い換えて「同じ問題を持つ者同士の親密さが大切だ」で終え、世代論の性質や排除・冷笑の蔓延を経由しない誤り。「自明ではない」という限定を落とす誤り。親密さの提起を「若者たちのため」と年齢層へ限定し、本文の射程(年長者にも年少者にも及ぶ)に反する誤り。 他社の解答が置く「若者たちがシニシズムに陥らない」ためという目的の限定は、本文が「年長者にも、年少者にも、例外なく」「世代をも越えた」と述べる射程に反するため採らない。また「連携してその解決を図る」は本文に根拠のない行為の追加であり採らない。先生への疑義として記録する。
模範解答(全候補)/問五
【Claude・採用】世代論は個人を粗雑に束ね例外を消す権力者の発想で、鎖国的な狭さごと解体すべきだ。速度と効率が同調しない者を排除し、冷笑が年齢を越え広がる今、筆者が語る根拠は、同じ問題を共有する者どうしの自明でなく意識的に築くほかない親密さだけだということ。